SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitは、独自のエンジニアリング酵素であるSEQzymeを特徴とした、新しいコンセプトのRNA-Seqライブラリ調整キットです。SEQzymeは、非常に高い処理能力とstrand displacement活性および逆転写酵素活性などを含む改善された特性により、既存の酵素の感度およびワークフローの限界を打破します。
これらの特徴により困難なRNAテンプレート、例えば高いGC含有量や強固な二次構造においても、効率的な処理を可能にし、低バイアスと高感度を保証します。このプラットフォームは、mRNA、miRNA、lncRNA、snoRNAを含む短鎖RNAと長鎖RNAの両方を同時にキャプチャし、非テンプレートのアダプター追加やハイブリダイゼーションに依存することなく、両側のアダプター配列を1つのステップで効率的に組み込みます。
SEQzyme を使用して生成されたライブラリは、99% 以上のstrand情報を保持します。SEQzymeには、クルードな細胞ライセートによる阻害がないことや、様々な品質のRNAにおいて優れた性能を発揮するなど、他にもいくつかの非常に重要な特徴があります。このバイオ・ラッドの新しい酵素プラットフォームの特性により、リキッドバイオプシー (cfRNA)、Single-Cellトランスクリプトミクス、in-situトランスクリプトミクス、FFPEサンプルの分析など、チャレンジングでありながらも重要なアプリケーションを可能にします。
その他のFAQ : SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kit
SEQuoia Complete RNA Library Prep Kitは、Beckman CoulterのSPRIselectビーズ等を除き、RNAからライブラリを作成するために必要なすべての試薬が含まれます。
構成品 | キャップ職 | 24 Reactions | 96 Reactions | 保管温度 |
---|---|---|---|---|
Reagent A Fragmentation Buffer | 赤色 | 48 μl | 192 μl | – 20 °C |
Reagent B End Repair Enzyme | 黄色 | 48 μl | 192 μl | – 20 °C |
Reagent C Poly(A) Buffer | 紫色 | 570 μl | 2x 1.1 ml | – 20 °C |
Reagent D Poly(A) Polymerase | 青色 | 30 μl | 120 μl | – 20 °C |
Reagent E SEQzyme Mix | 橙色 | 120 μl | 480 μl | – 20 °C |
Reagent F Amplification Mix | 緑色 | 600 μl | 2x 1.2 ml | – 20 °C |
Purification Beads | 灰色 | 480 μl | 2x 960 μl | 4 °C |
以下の試薬消耗品類が必要となりますが、キットには含まれておりませんので別途ご用意ください。これらの材料は、当キットのプロトコールで検証されており、他の製品で代用した場合、理想的な結果が得られない場合があります。
キットに含まれないオプションの試薬類
必要機材一覧
試薬ボックスAのSEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitのコンポーネントは、-20℃で保存する必要があります。キットを使⽤するときは、プロトコールに特に記載がない限り、試薬を氷上に置いてください。精製ビーズ(試薬ボックスB)は4°Cで保存してください。
適切な保管状態において、出荷⽇から6か⽉間保証されます。
理想的なRNA精製方法は、サンプルの種類と実験目的によって異なります。組織サンプルにはPureZOL RNA Isolation Reagent (7326880) を、培養細胞にはSingleShot Cell Lysis Kit (1725080) の使⽤を推奨しています。small RNAを目的とする場合、カラムベースのキットでは200 nt未満のRNAフラグメントが失われる可能性があるため、SingleShot Cell Lysis Kitを用いてください。
下記参考⽂献では、small RNA分離のためのさまざまな⽅法の概要が示されています。
SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prepキットは、1 ng〜1 μgのTotal RNAに対応します。
RNAの断片化処理時間。Universal Human Reference RNAを94℃でインキュベーションした際のインキュベーション時間による違い。
最適な断⽚化処理は、RNAの品質を含むいくつかの要因に依存します。断片化処理方法は、実験条件に基づいて最適化することをお勧めします。ライブラリ作成を開始する前に、サンプルをAgilent Bioanalyzer RNA 6000 Nano / Picoチップで分析して、RNAインテグリティナンバー (RIN) を決定することにより、用いるRNAの品質を評価します。⽬的のフラグメントサイズを達成するために、温度とインキュベーション時間を変化させます。これは経験的に決定する必要がありますが、下記の表を検討初期のガイドラインとして使⽤できます。
RNA インテグリティー | 目的の平均インサートサイズ (bp) | 断片化処理条件 | |
温度(°C) | 時間(分) | ||
RIN >7 | 100–200 | 94 | 10 |
200–300 | 94 | 8 | |
300–400 | 94 | 5 | |
400–600 | 94 | 3 | |
RIN = 2 to 7 | 100–300 | 94 | 1–3 |
RIN < 2 | 100–200 | 70 | Up to 1 |
ライブラリ作成前のrRNAの除去はオプションです。ライブラリ作成後にrRNA特異的にcDNAコンストラクトを除去することで、稀なRNAターゲットを失うリスクを最小限に抑えることができ、サンプルRNAが少ない際などに有利な場合があります。いずれにしても、シーケンシングリードの量と質を最⼤化するには、rRNAまたはそのコンストラクトを除外してからシーケンスする必要があります。
はい。ゲノムDNAはRNA調製物の⼀般的な汚染物質であり、RNAの正確な定量を妨げる可能性があります。RNAサンプルに混⼊しているgDNAを除去するために、サンプルをDNase I (キットには含まれていません) で処理してください。DNase Iで処理した後、フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿を使⽤してサンプルから酵素を除去する必要があります。DNase Iの残存は⼀本鎖DNAプローブを分解するため、酵素の除去は重要なステップです。
はい。SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitは、FFPE、リキッドバイオプシー等からの分解されているRNAでも⾮常によく機能します。SEQzymeの独⾃の特性により、他の市販キットで使⽤されている酵素の制限の多くが回避され、幅広いRNA量と様々なRNAの品質状態に対応できます。FFPE-RNA用の断⽚化に関する推奨事項は、マニュアルをご参照ください。
通常、SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitは効率が⾼いため、他の市販のキットと比較して3〜5少ないサイクルで済みます。過剰な増幅は、バイアス、重複率の増加、キメラなどのアーティファクトを引き起こす可能性があるため、少ないサイクルでできることは有利な特性となります。アーティファクトを最小限に抑えるには、最終的なライブラリ濃度が200〜1,000 ngになるようにPCR増幅サイクルの数を最適化します。PCRサイクル数は、インプットRNAの量と質に依存します。次の表は一般的なガイドラインで、最適化の検討の初期条件として使用できます。
PCRサイクルの推奨事項
Total RNAインプット量 | PCRサイクル数 |
---|---|
1 µg | 6 |
100 ng | 9 |
10 ng | 12 |
1 ng | 15 |
mRNA、miRNA、lncRNA、snoRNAなどの短鎖RNAも長鎖RNAも両方ともキャプチャします。このキットは小さなRNAを効率的に捕捉するので、結果の精度を確保するために、シーケンス深度は20M〜30Mリードにすることをお勧めします。
はい。独自設計のレトロトランスポゾンであるSEQzymeの特性によりstrandは維持されます。ライブラリ作成では、RNAフラグメントはポリアデニル化を受け、各フラグメントに合成poly(A) tailが作成されます。ここにR2シーケンスを含むpoly(dT)プライマーがハイブリダイズし、SEQzymeによって認識される複合体を作成します。SEQzymeは複合体に結合し、strand displacement活性と高い処理能力により逆転写を行い、cDNAを合成します。SEQzymeがRNAフラグメントの5 '末端に到達すると、2つ目のアダプターを連結します。この連続した非常に効率的な合成反応により全てのタイプのRNA情報が保持された、シーケンス可能な99%strandライブラリが得られます。
SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitで調製したRNAライブラリの構造。 SEQuoia Completeライブラリは、strand情報の99%以上を保持しています。2nd strandは、アラインメントと分析の際に用いられます。
断片化ステップに続いて、すべてのフラグメントはポリアデニル化を受けます。合成poly(A) tailはpoly(dT)プライマーにアニーリングし、SEQzymeによって認識される複合体を作成します。SEQzymeは複合体に結合し、strand displacement活性と高い処理能力により逆転写を行い、cDNAを合成します。
これは、SEQzymeの独自の特性によるもので、SEQzymeがRNAフラグメントの5'末端に到達すると、そこで2つ目のアダプターの付加反応が行われます。この非常に効率的な連続合成反応により、すべてタイプのRNA情報を保持した、シーケンス可能な99% strandライブラリが得られます。
最高品質のシーケンスデータを実現するには、ライブラリを正確に定量化して最適なクラスター密度を作成することが重要です。また、インサートのサイズの確認とアダプターダイマーを確認することも不可欠です。ライブラリ調製の正確な定量と定性には、イルミナTruSeqのddPCRライブラリ定量キット (1863040)が有用です。このキットはQX200 Droplet Digital PCRシステム用の試薬で、ドロップレットの蛍光強度プロットのクラスターを確認することにより、適切に作成されたライブラリとアダプターダイマーを識別することができ、ライブラリの品質の評価に適しています。
あるいは、QbitまたはqPCRライブラリ定量キットを用いたライブラリ濃度測定、およびBioanalyzerを用いてのサイズ分布の評価を行います。これらの方法は、非特異性によるバイアスの対象となります。
ライブラリの作成後、Agilent Bioanalyzer DNAチップでライブラリの品質を評価結果です。エレクトロフェログラムのピークが約400 bpの狭い分布を示していることを確認します。〜80 bp (プライマー) または128 bp (アダプターダイマー) のピークがある場合は、SPRIselectビーズによるクリーンアップ手順を繰り返します。
SEQuoia Complete Stranded RNA Libraryの典型的なBioanalyzer解析結果 ライブラリの作成後、Agilent Bioanalyzer DNAチップでのライブラリの品質を評価。エレクトロフェログラムがピークサイズ約400 bpの狭い分布を示していることを確認します。〜80 bp (プライマー) または128 bp (アダプターダイマー) のピークがある場合は、SPRIselectビーズによるクリーンアップ手順を繰り返します。
はい。Read 2の最初の8塩基は、UMIとして使用できるランダムタグシーケンスです。SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitでは、8サイクルのRead 2で最初の8bpのみ取得し、Read 1をより長くすることが推奨されます。
はい。ライブラリのマルチプレックス用に、12セットまたは96セットのユニークなデュアルインデックスプライマーを提供しています。プライマーは最終増幅ステップで追加されるため、最終クリーンアップステップの完了時にシーケンス対応のライブラリが得られます。マルチプレックスにはSEQuoiaデュアルインデックスプライマーを使用することを強くお勧めします。これらはシーケンスアーティファクトを減らすために最適化されているためです。詳細については、bio-rad.com / SEQDIPにアクセスしてください。
カタログ番号 | 内容 |
---|---|
12011928 | SEQuoia Dual Indexed Primers Set (12種のデュアルインデックスプライマー, 計96反応) |
12011930 | SEQuoia Dual Indexed Primers Plate (96種のデュアルインデックスプライマー, 計96 反応) |
SEQuoia Dual Indexed Primerは、12セットまたは96セットのユニークなデュアルインデックスプライマーがございます。12セットの各バイアル、および96セットの96ウェルプレートの各ウェルには、i5インデックスアダプターおよびi7インデックスアダプターを含む、プライマーのペアが入っています。12セットのプライマーは、96ウェルプレートのウェルA1〜B4に入っているプライマーと同じセットです。
夫々のセットは、合計96回の反応に必要な量が含まれています。96ウェルプレートに入っている量は必要量より多い場合がありますが、コンタミネーションの可能性を回避するために、余ったプライマーを保存して再利用することは推奨いたしません。
デュアルインデックスプライマーの独自の設計により、PCR増幅ステップ中にDNAフラグメントの両端に正しい方向で2つの異なるアダプターを確実に追加できます。これにより、シーケンシング可能な最終的なライブラリが得られます。
クラスター密度とRunの品質が低下する可能性があるためお勧めできません。
シーケンシングコストを節約するために、シングルエンドのリードをお勧めします。
シーケンス深度は、特定のサンプルタイプとアプリケーションによって異なります。SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitを使用して構築されたライブラリは複雑であるため、読み取り深度は20M〜30Mをお勧めします。
ペアエンド読み取りはお勧めしません。Poly(T)配列が存在するため、Read 2に続く8塩基のUMIの読み取り品質が低下する可能性があります。
はい。QCやダウンストリームの分析に進む前に、リードのトリミングを行うことをお勧めします。SEQuoia Completeコンストラクトには、インサートのすぐ上流にある1塩基のシトシンと、インサートの直後のpoly(A)配列が含まれています。シトシンとpoly(A) tailをトリミングするには、Linux、MacOS、およびWindowsで実⾏可能なcutadaptが利用できます。詳細については、cutadapt user guideを参照してください。FASTQファイル (圧縮または非圧縮) のシーケンスを処理します。下記のコマンドでcutadaptを実行してシーケンスをトリミングできます。
cutadapt -u 1 -a A{10} -m 15 -o output_file.fastq.gz input_file.fastq.gz
Here is what is happening:
コマンド | 結果 |
---|---|
-u 1 | リードの最初の塩基(5 ')をトリミングするようにcutadaptに指示します。 |
-a A{10} | 任意のpoly(A)とリード内の後続のすべての塩基をトリミングするようにcutadaptに指示します。Poly(A)は少なくとも10塩基の長さ(読み取りの最後で途切れているような場合を除く)であり、1つ以下のエラー (非アデニン) を含みます。Poly(A) tailのトリミングは重要な処理になります。 |
-m 15 | トリミング後、15塩基より短いリードをFASTQから除きます。 |
いいえ。SEQuoia Complete Stranded RNA Library Prep Kitsのアダプターは、Illuminaプラットフォームに互換性があります。
マッピングされたリードのレンジは、いくつかの要因によってライブラリ毎に異なりますが、SEQuoia Completeライブラリを使用すると、他の製品と比較して、マッピングされていない (アライメントされていない) リードの割合が高くなります。これは、SEQuoiaワークフローが他のキットよりも多種多様な転写産物(そのうちのいくつかはまだマッピングされていない)をキャプチャするという事に関連しています。
SEQuoia Completeデータは、従来からのfastseqデータファイル分析ツールの他、一連のBio-Radのアプリケーションで処理することができます。これらのアプリケーションは、DockerコンテナまたはWebでホストされるポータルとしてご利用いただけます。 詳細とダウンロードについては、SeqSense NGS Analysis Softwareのページをご覧ください。